幸運と悪魔を宿すグリモワールを持つ少年たちの妹ちゃん
第3章 貴族の家
「黙れ!!私はこの娘に聞いておるのだ!!」
私は突然の怒鳴り声に思わずひぇっと小声で悲鳴をこぼしてしまった。いきなり連れてこられて、見世物にされるとは思ってみなかった。チクチクと好奇の目が私に刺さり、とてもじゃないがよそ見などできない。私は怒りを露わにする目の前の男性に向かって口を開いた。
「……クレアと申します。ハージ村から参りました」
「ハージ村だと!? 最果ての街じゃないか!!下民ごときをこの屋敷に足を踏み入れさせるとは…侮辱の罪で死刑にしてやる!!!」
周りの豹変ぶりに多少ギョッとしながらも、私は目の前の男性を見つめた。男性は深く溜息をつき、そして頭を抱えた。
「………父親の名はなんと言う?」
「父親はおりません。母親もです。私は捨て子で教会に拾われた身です」
「孤児ぃ?なんと汚らしい! お父様!そんな子、早く追い出してしまいましょう!!」
無傷で追い出していただけるなら、なんと嬉しいことか。私は軽くお辞儀をして、その場から立ち去ろうとした。
「待て」
ひっと体に力が入る。なんだ?最果ての村だと死刑になるのか!?私は恐る恐る振り返った。
「お前の嫁入りを認めよう。最果ての町、ハージ村の娘よ」
「え」
私は驚き、固まった。しかし、口を開く前に、周りが騒ぎ始める。
「お、お父様!? 一体何を考えていらっしゃるのですか!?こんな下民をうちに迎え入れるだなんて!!!」
「父上! 何故、私や兄上がこんな下民を嫁に貰わないといけないのです!?シルヴァ家の恥です」
など散々な言われよう。しかし、ギロっと男性が彼らを見ると、ピタッとその声は止んだ。
「私の命が聞けないと申すのか?」
「い、いえ…そのようなことは……」
「はい!聞けません」
吃る彼らの声を遮り、私はそう彼に言った。視線が私に向き、私は頭を下げた。
「私はこのお話をお断りするために、ここへ参ったのです。私は、魔法騎士団の試験を受けようと思っております」
「…………では、その間、ここに滞在するといい」
「え???」
そして、私は何故か魔法騎士団の試験の間、ここで窮屈な半年間を過ごすこととなったのだった。