第4章 選べるわけないじゃないですか
電話越しの彼女の冷たい声を聞いて
直ぐに悟りました。
簡単には許してもらえないと。
これまでも喧嘩はしてきましたが
今回だけは訳が違った。
それでも…嫌われたくなかった。
小生には有栖しかいないんです。
あの子はね、小生が有栖を好きになったのは成人式の日がきっかけだって思ってるみたいですけど…
本当は学生の頃からの片想いだったんです。
あの頃は他に男がいたみたいですから
ただ遠目で見ていることしか出来なかったけど
ずっとずっと有栖のことを想っていました。
もう忘れられてしまっていますが
入学したての頃、貰い子であることから
辛く当たれていた小生に優しくしてくれた。
彼女にとってはなんてことの
無い事だったかもしれません。
でも有栖が小生に何か一言声をかけて
くれる度、小生は救われてたんです。
それくらい、好きでした。
なのに、有栖は観音坂独歩の方に
行ってしまった。