第4章 選べるわけないじゃないですか
side夢野幻太郎
「そろそろ結婚しませんか?」
「えっ」
夕飯後、皿洗い中の有栖にそう言えば
彼女は持っていた茶碗を床に落とす。
パリンッと音がして割れた茶碗を見て
有栖は慌てたように声を上げた。
「あー!これお気に入りだったのに!!」
ショックと言わんばかりに有栖は膝をつく。
これは…タイミングが悪かっただろうか。
「ちょっと幻太郎!ぼさっとしてないで
ちりとりとほうき持ってきてよ!」
「あっ、はい」
…怒られてしまったな。
言われるままにリビングから小ぼうきとちりとりを
持ってきて破片を片付けるのを手伝う。
それから改めて先の話の続きをすれば
有栖は戸惑ったように頬を赤らめながら
「なんでこんなムードもへったくれもない時に言うのよ馬鹿」と目を逸らしてきた。
反応があまりにも可愛くて
「嫌ですか?」とわざと答えが分かりきったことを
問えば彼女は首を横に振る。