第3章 だからって俺を巻き込まないで
秋といえども昼間はまだ夏の暑さは残る。
10時、幻太郎の待ち合わせとは2時間早く
私はハチ公前にいた。
待っているのは幻太郎ではなく
昨日電話をかけた相手…。
忙しいって断られたけど
私が色々工作して暇を取らせた。
使えるものは使わないとね。
…そろそろ来るかな。
「…なんか会社行ったら
今日は休みって帰されたんだけど」
“お前、なんかした?”
と、相変わらず陰気臭い顔で
待ち合わせ場所に来た独歩が私を睨む。
おお、こわ。
まあ、この反応は私にとって
予想の範囲内だった。
「おはようございます先輩〜♡♡
会いたかったぁ♡♡」
「うるさい!用事ってなんなんだよ…!」
後輩ぶって甘えるように腕にしがみつけば
離れろと言わんばかりに振りほどかれる。
なによケチ。
「用事っていう用事なんてないわよ
ただ一緒にいて欲しいだけ」
「は?」
「なに?なんか文句ある?」
「……別に…はぁ…また俺は何か意味のわからないことに巻き込まれているのか…どうして俺はいつもこうなんだ…俺が…俺が全部悪いのか…俺がこんなに情けないから、後輩も付け上がるんだ…俺のせい…俺のせい」
うわー、なんか変なスイッチ入っちゃったよこの人。
面倒臭いなぁ。
「はいはい
かわいい後輩のわがまま聞いてくれて
ありがとうございます 独歩先輩」
うじうじしないでよね、と背中を叩けば
恨めしそうな独歩の声。
「こんな時ばっかり後輩ぶりやがってぇ…」
有栖ちゃんなーんもきこえなーい。