第7章 帰り道。
私の前を歩く浩二君の
背中を見つめていた。
風に乗って、浩二君の匂いがした。
その匂いに、靴箱で抱きしめられた事を思いだしていた。
胸がきゅ~って切なくなって、
「…好き…。」
思わず言葉が出てしまった。
「ん?なんかゆうた?」
浩二君が振り返った。
…ぎゃあ~!!
心の声が!!ダダ漏れしてるやん。
重症や!!私!!
「な!!なんもないよ。」
あたふたと取り繕う私にお構いなしで、
「あっ…そうや…。」
浩二君が…一歩、二歩…私に近づいた。
顔が…浩二君の顔が、唇が…
私の顔の横をかすめて…私の肩に顎を乗せた。
「俺も授業料は、体で払ってもらうわな。」
耳元で囁かれたその声は、
私の体の全機能を停止させた。
同じ言葉なのに…この破壊力。
みるみる顔が真っ赤になり、
心臓がドキドキし過ぎて…痛かった。
「…どういう…意味…?」
上手く息も出来ない…。
酸欠気味に聞き返した私に、
浩二君はいつものように笑いながら、
「そういう意味。」
そう言って…体を離して、
また歩き出した。
…え??ほんまに??
そういう意味なん??
…え??どういう意味??
頭は…パニックに陥っていた。
…って言うか、浩二君!!
図書館での翔太君との会話…
どこから聞いてたんよ!!
「何してるん。はよ来いよ。」
そう言って浩二君は手を出した。
私は、ドキドキとうるさい胸を押さえて、
無言で浩二君の手を取った。
浩二君…貴方の気持ちが知りたいよ。
今日の不機嫌は、ヤキモチ?
そう思っててもいい?
無言の背中を見つめながら…
告白の決意を固めていた。