第3章 ファイアーエムブレム短編・SS
「名前!」
そう叫びながら、
自分で手当てをしている私のテントに入ってきたのは、ウルフであった。
予想外の来客に驚きながらも、落ち着いて応える。
『ウルフ殿…どうかされましたか?』
「どうかしたか、だと?おれは目がいい方なんだ。
さっき怪我したところを見せてみろ。」
やはり、気のせいではなかったらしい、
と思うと同時に気にかけて貰えている嬉しさで
反射的に自分の手を握ってしまう。
その動作を痛みに耐えていると捉えたウルフが私の腕に手を伸ばす。
『あの、別に大した怪我ではないのです。
槍が擦ってできた切り傷なので。』
案の定、ウルフは、ならその手はなんだと表情で促している。
『ウルフ殿に気にかけて貰えていると思うと嬉しいのです。』
…言ってしまった。本当の事を。
ハッとして少し俯いていると、ウルフは応えた。
「戦場でよそ見など言語道断、と言いたいところだが…
理由が理由だけに強くは言えないな。
今度からはおれが側で戦う。」
いいな?と、去り際に念をおされてテントを去っていった。
表情はあまりよく見えなかったが、少しばかり赤くなっていたように思う。
今はこれだけで十分だ。
私はまだ、頑張れる。