第3章 ファイアーエムブレム短編・SS
草原の狼
目の前には隠さない殺気を惜しげもなく出す敵が、
横や後ろには味方が敵と戦っている。
慣れた手つきで剣を柄から抜き、構える。
野太い声の掛け声と共に、
ついぞこちらに飛びかかる敵の槍を交わし、脇腹を一払い。
怯むことなく続く敵の刃を同様に払い続ける。
私は、誰一人、殺させたりしない。
マルス様の為、シーダ様の為、みんなの為に!
…そして、ウルフの為に。
敵を払い続けるのは楽ではないが、
ちらりと斜め前を覗き見る。
そちらには、こちらと同様に、あるいはそれ以上に
敵を薙ぎ払い続けるウルフが見えた。
何故彼のことが気になるのか。
ハーディン様のこともあるけれど、
原因はそれだけではない。
そう、きっとこれは…。
雑念がよぎったからか、相手の攻撃を許してしまった。
幸い、瞬時に対応したものの、左腕に槍の切り傷がついた。
微弱ながら確実に訴える痛みに耐えながら、
変わらずかかる敵を斬る。
…ふと、ウルフと目があった、気がした。
それから程なくして、敵の撤退で戦闘が収束した。
マルス様の指揮のもと、それぞれ身支度を整え、各自のテントへ帰る。