第4章 銀魂短編・SS
うさぎといちご
ツインテールの日というものが存在する。
そう、2月2日だ。
その約一週間後が阿伏兎の誕生日。
私はその前祝いを兼ねて、
普段適当に後ろで縛っているだけの長髪を解き、ツインテールに結い直した。
鏡に映る自分の姿を見て、この歳でこれはちょっときついかな、などと呟きながらささやかなドッキリの準備を整える。
ちゃんとしたお祝いは来週にするつもりだし、少しフルーツを買ってきただけだ。
お茶とお菓子も用意したし、普通にただのお茶会。
まあ、ただ私がお茶を楽しみたかっただけのこじつけなのだが。
予め呼びつけていた阿伏兎の元へ行くと、気怠そうな後ろ姿が見えた。
振り返られないようにそうっと忍足で近寄ると、
左手だけで阿伏兎の目を覆…いたかったのだが、身長が足らず口を抑える形になってしまった。
苦し紛れに「だーれだ?」と声をかけると、
笑いを堪えながら「…、名前」と返ってきた。
…うん、ここまでは予想どおり。
手が届くように少し屈んでくれた阿伏兎の目を片手で覆い、
もう片方の手で隠し持っていた苺を阿伏兎の口に当てがう。
すると一瞬動きが止まったが、何でもなかったかのように苺を食べ始めた。
苺を食べ終わると、私の指を舐め始め…って!
『コラ!舐めていいなんて言ってないでしょ!』
「あんまり可愛いいたずらをするもんだからつい…」
悪びれもなさそうに謝る姿に多少の苛立ちを覚えたが、計画を再開。
『振り返ってもいいよ?』
私の言葉で阿伏兎が振り返ったのを確認すると、
両手を頭の上にウサギの耳のように立て、ぴょんぴょんと跳ねた。
……、反応が無い。
完全に罰ゲームになっちゃうから何か反応してと叫びそうになったところで阿伏兎が口を開く。
「悪ぃ、可愛すぎて意識が飛んでた」
片手で顔を覆いながら言うものだから、私まで恥ずかしくなってきた。
気を紛らわすように阿伏兎の手を引くと、お茶会の場所へと歩き出した。
今日はツインテールの日だから兎になりきってみただけなんだからね!と捨て台詞を吐きながら。