第3章 ファイアーエムブレム短編・SS
『あの!カイン殿!』
私の少し上ずった声は驚いた声によって受け止められた
「名前、か?」
『ええ、その、えっと』
いざ渡そうとなると少し勇気がいる
戦場とは全く別の勇気
彼女たちの強さがここでわかるとは
そんな気持ちを知ってか知らずか彼の方が口を開いた
「こんなところで立ち話もなんだ、部屋にでも入ろう」
「それで、俺に何か用か?」
『これ、受け取って貰えますか』
「チョコレート、か?」
『はい、一応手作りなので』
彼は少し訝しみながら私からチョコを受け取った
目線で開けることを促すと躊躇いながら紐を解いた
まず手紙から読んだ彼は驚いた声をだした
「・・・本当に、俺でいいのか?」
そう、シンプルに好きですと一言書いてあったのだから
『今私の眼の前にはカイン殿しかいませんよ
それに、私が嘘をついた事がありますか?』
私がわざとらしくはにかみながら言うと
「俺も、好きだ。だが、ひとつ言わせてくれ。お前の口から聞かせてくれ」
という予想外の言葉が返ってきた
それもそのはず。質問には触れずに感想が返ってきたからだ
ずるいな、とは思ったが私も仕返しするべきだろう
『好きです、カイン殿。他の誰でもなく』
「お、お前、それは反則だろう!」
そんなことまでいってないだろうと顔を真っ赤にしながら小さく呟く彼
さすがに私も少し恥ずかしかった
『ところで、ひとつ食べてみてくれますか?』
紛らわすために言ったのだがあまり紛れていないような気もした
「ああ、頂くよ。 ん、うまいな!」
食べながら太陽のような笑みを浮かべる彼を見たらそんなことも飛んでしまったのだけれど
バレンタインデーもすてたものではないな
心なしか彼と同じことを思ったように感じた