第3章 ファイアーエムブレム短編・SS
ばれんたいん
バレンタインデー、そう、あたりがピンクに染まり
そこら中にチョコレートの匂いが立ち込めるアレだ
漠然とした形容にしか例えられないのはお察しの通り本命がどうのこうのといった
色恋沙汰に興味がなかったからだ
・・・興味がなかったわけでもないが
周りが楽しそうなのを見ているのは楽しかったし
自分がというより見ている方が楽しかったのは確かなのだ
今年もそれに混ざって一つ二つ彼女らからチョコレートを貰えれば十分だ
そう思っていたのに
「なあカイン、お前は今年こそ誰かからチョコレートを貰うのか?」
「なんだ急に。勝者の憐れみなんざいらないぞ」
「まあそういうな。本当に誰もいないのか?俺から見てもいい男だと思うのにな」
「よしてくれ。俺にそんな趣味はないぞアベル」
他愛のない会話
悪いとは思ったが聞こえてしまっては仕方ない
私はそのまま聞くことにした
「ははは。俺だってないさ。しかしまあこれは本当に紹介が必要か?」
「さすがモテる男は違うな」
「そう固くなるなよ。本気で心配なんだぜ?」
「そんなことで心配されるくらいなら死んだ方がマシだ。
お前はもう彼女の所へでも他の女たちの所へでもいけばいいだろう」
そういって彼はアベル殿を振り切って先に歩いて行ってしまった
一人残ったアベル殿はあからさまにため息をついていた
あんなに気にしていたのに気づけなかったのかと呟きながら。