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ジャンル混同短編・SS収録1

第1章 Fate短編・SS


虚像の真実 (言峰視点)

…ある予感めいた何かが己の身を走った。
別段どうでもいいと切り捨てる事もできるようなものだ。
ならば、切り捨てればいいと。

知らずうちに未だに未練が残っているのではとも思った。
今の惨状を持ってしてでも自らに固執したものが残っているのかと。

どうやら、そうではないらしい。
全くもってふざけた話だが新しい予兆というものであるらしい。

実に、実に己らしからぬ事象であると知りながら、
しかし、同時に興味も湧いたのだ。

その、新しい予兆とやらに。
退屈凌ぎくらいにはなるだろうと、高を括って。

予感の告げる場所、女に予感の告げるままの言葉を投げかける。
女も同様に返す。

まるで想定されたものように執り行われたその光景は
ちらほらと形骸化され見飽きたシーンを見せられているという錯覚すら起こす。

その後に日常の風景に溶け込むようにその場にふさわしい行動を
最初から何も無かったかのように行う様は他人から見れば
些か滑稽に思えたのかもしれない。

それからずっと、予感に沿うように行動を重ねた。
本来の姿である自分の役目を果たしつつ予感へも沿って動いているのだ。

当然女も己の正体に疑念を抱いていることだろう。
が、何も聞こうとはしてこない。
返って都合がいい。

そのまま虚像の真実で塗り固めてしまえば何も問題は無いのだから。
もう一つ、驚いたものは自分自身に潜んだ感情のことだ。

ずっと前に、あれきり置き去りにして感じることは無いと思った感情。
ああ、だが、以前と違い明確に己自身が欲しているものだと信じる事ができる。

独占したいと、ただ一人お前だけを。
私が全て作り上げるのだ、お前の身で。
他の何よりも誰よりもお気に入りであるのだから。

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