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菊丸英二誕生祭:短編集

第8章 がきんちょ。(テーマ:祭り)



「英二、なんてことしてくれんのよ。」

「は忍足がタイプなの?」

「大人っぽくていいよね…!」

英二に負けないくらいの笑顔で英二を見るけれど…、
英二は私なんか見てなくて、なんだか怖い表情をしていた。

それからはずっと無言だった。
そのまま祭りのフィナーレとも言える花火へ。
すごく気まずいまま、私たちは河原へと移動した。

「えい、…じ?」

そっと英二に声をかけるけど、言葉は帰ってこなかった。
そういえば、私はいつから英二のこと見上げるようになっていたんだろう。
…よく見ると、すごく整った顔立ちをしてるし。
なんだ、英二もイケメンじゃん。
関西弁の子とはまた違ったジャンルのイケメン。

英二の顔をじっと見ていると、ドォンと大きな音を立てて花火が上がった。
花火よりも、今は英二の顔を見ていたかった。

ずっとかわいいと思っていた年下の英二が、いつの間にかこんなに大きくなっていた。

「うー…っ、好きだああああっ!!!」

眉がぐっと下がったかと思うと、急に叫びだす英二。

「何言ってっ…!?」

「が好きだああああっ!!」

その声は、花火に消されて私以外には聞こえていないようだった。
いつの間にか、英二もこんな感情を抱くようになっていたんだ…。

「ばぁか…、」

それが、寂しいような、嬉しいような、ちょっとむずがゆい気分。

「今は、ごめんねっ…!!」

私も、同じように叫んだ。

今は、付き合うとかそんな気持ちはないけど、弟としてしか見ることができなかったけど…
これからはきっと、英二のことを男の子としてみることができる気がする。

「まぁ、英二次第だけどね。」

そっとつぶやいた言葉は、英二には届いていなかった。

花火が終わると、すっきりしたような顔で私を見る英二。

「ねぇねぇ、今はって言ったけど、いつならいいの??」

「さぁね!」

問いかけにはっきりした答えは出さず、家までの道のりを歩き出した。

えーっとか、教えてよーっとか、いろいろ言ってくるけど、
いつ英二に対してそんな思いを持つのかはわからないし、
…そもそも持てるのかもわからないから…。
ちょっとずるいかもしれないけど、保留ってことで。

近所のがきんちょとの祭りも、まぁまぁ楽しいね!



おわり
→Next 秋
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