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第4章 黒いもの







部屋に入ると、彼は部屋を珍しそうに見渡した。

「あ、あんまり見られると恥ずかしいな」

そういうと、彼はあわてたように言う。

「あ、すいません!女の人の部屋なんて入った事なくて…でも、可愛い部屋ですね」

そういって綺麗に笑う。
その笑顔は反則だよなぁ、と思ってしまう。
元から顔立ちがすごく綺麗なのに、笑顔になるとすごくやわらかく笑う。

「間取りは一緒なんですね。俺の部屋もこの間取りなんですよ」
「あ、そうなんだ。結構使いやすいよね。」

そんな話をしながら、ベランダへ向かう。
ベランダにはさっきのパンツが落ちていて、それを彼は拾う。

「うわーホントすいませんでした。まさか落とすとは思ってなくて…」
「気にしないで、そんな事誰でもあるよ」
「…さんやさしいですね、ありがとうございます」


「あ、そういえば、さん今日は出かけるんですか?」
「え?」
「しっかり化粧してるからデートかと思って」
「出かけるのはあってるけどデートじゃないよ、彼氏なんてしばらくいないし」

そういうと、彼はパァッと笑顔になる。

「そうなんですか?彼氏いないんですか!?」

なんなんだろうその嬉しそうな顔は。
そんな顔されるとちょっと勘違いしてしまいそう。

「じゃあ買い物とかですか?」

そう聞いてくるから、彼なら大丈夫だろうと思い、なんかストーカーされてるみたいでこれから警察に…と話した。

「え、本当ですか?さん一人暮らしですもんね、怖いですよね…」

そう言って何か考えるそぶりを見せる。

「警察、僕も一緒に行きましょうか?」
「…え?」

その言葉は予想外だった。
一人なのが不安に見えたのだろうか。
いや、その通り、不安でいっぱいなんだけど。
顔に、出てたかな。

「男が一緒の方が外歩くにも心配ないでしょ?どこに潜んでるかもわからないし」
「え、あ、そう、だね…」
「あっ、いや、不安にさせようとしたわけじゃなくて!」

彼は首を振って慌てて弁解するが、確かにその通りだ。
どこに潜んでいるのか、どんな人なのかもわからないのでこちらとしてはどうしようもないのだ。
彼に申し訳ない気持ちもあったが、暇なので、と言われると、お願いします、と返した。



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