第2章 視線
最近、誰かにずっと見られてる――。
最初は、なんとなく、時々視線を感じるような気がして。
でも、自意識過剰かな?なんて思ってた。
彼氏なんてしばらく居ない、干物な私を見るなんて物好きな人は居ないだろう、なんて。
でも、それが事実であったことを知らせる出来事が起きた。
「・・・・?」
金曜日、今週も終わったー、と仕事から帰宅し、郵便受けのポストをあけると、1通の白い封筒が入っていた。
そこには、ココの住所と切手はなく、私の名前だけが書いてあった。
住所と切手が無い、という事は、差出人が直接このポストに入れたってこと?
とりあえずその手紙を持って部屋に戻る。
テーブルの上に手紙をおき、カバンを置いて、上着を脱ぎハンガーにかける。
冷蔵庫に行きお茶を取り出し、お気に入りのコップに注ぐ。
コップを持ってテーブルに戻り、その白い封筒を開けた。
「――――なに、これ」
その封筒の中には、隠し撮りされたと思われる、仕事時の私の写真が数枚入っていた。
驚きで写真を落としてしまうと、裏面が見え、そこには何かが書いてあった。
恐る恐る写真を拾いあげ、読んでみる。
『僕のお気に入りの写真。綺麗に撮れてるでしょ?』
それは、会社の前で話をしながら笑っている写真だった。
自分の隣には一人の男性が写っているが、その人の顔はマジックで黒くグチャグチャに塗りつぶされていた。
そのグチャグチャに塗りつぶされた部分が、思い切り強く塗りつぶしたのか、写真の裏がボコボコになっていた。
それが余計に恐怖感を煽ってくる。
誰?これを撮ったのは誰なの?
心当たりなんてない。
最近関わりのある人なんて、会社で一緒の人か、昔からの友人くらいしかいない。
積極的に友達を作るタイプではない私は、友人関係は"狭く深く"がモットーなのだ。
やだ、気持ち悪い!
そう思って私は、その写真と封筒をまとめてゴミ箱に投げ入れ、布団に潜った。