第1章 出会い
「じゃああとこの資料まとめてくれる?」
「はい」
いつも通り返事をし、私は目の前の自分用のパソコンに向かう。
ここは一応、大手(といっていいと思う)の企業だ。
そこの中の総務部で私は仕事をしている。
基本的には同じ仕事を繰り返す。
時々違うものも入ってくるけど、やりがいを感じるような仕事はなかった。
まぁ、こんな平凡な私が大手企業に入社し、働いている、って言う事がまず喜ばしい事なのだろうけど。
仕事にはやっぱり"やりがい"というものが欲しくなるものだ。
だからといって転職しようとか、そういう気にはなれなかった。
不景気な今、別の仕事を探すのも一苦労だ。
職場に対して特に不満があるわけでもなく、職場に慣れてきたからか、
ただ漠然と、今のままでいいのかな、なんて考えてしまうときがある。
今がそんな時期なのかもしれない。
プライベートで楽しい事(たとえば、好きな人・彼氏ができるとか)があれば、
仕事への意欲も変わるのかな、なんて考える自分にふと笑ってみる。
一応、今まで彼氏がいなかったわけではない。
学生時代にはそれなりに恋愛も経験した。でもま、学生の恋愛は学生のうちで終わるものよね。
学生時代には何故かそれなりに出会いもあり、いろんな人に恋をしてみたりもした。
でも何故か、社会に出た途端、それがなくなってしまった。
私が勤務しているのは大手企業。それなりに社員数もいる。
社員の入れ替わり、新卒入社など、人も変わるのだから、出会ってもいいのではないかと時々思うときがあるのだが。
何せ私は総務部。基本的に女性ばかりの部署である。
唯一部長だけが男だが、もう40代で、結婚し子供もいる。
さすがにそういう人に興味はもてない。というか持ちたくない。
他の部署の人と関わりは全く無いわけではないが、総務、という立場なので、
仕事の話をし、それだけで終わってしまう。
…いやでもこれがもっと美人だったり、社交的な人だったら違うのかなぁ、なんて凹んだり。