第1章 依頼にて
よほどうけたのか少しの間笑っていた。
「ああ、ごめんなさいね。それで貴女の仕事仲間のことなんだけど、ここには来てないわね。少なくとも私は一度も見た事がないわ」
「そうですか」
「お役に立てなくてごめんなさいね」
「いいえ、こちらこそ急にご自宅まで来てしまって申し訳なく」
「いいのよそんなことは」
随分話し込んでいたのか玄関のドアを開けると夜風が身体に吹き付ける。
「本当にごめんなさいね。こんなに遅くなってしまって」
「いいえ大丈夫です」
ドアが閉まる寸前、裕美子さんが閉まるドアを止めた。
「恵理香さん、きおつけて、嫌な気配を感じるわ」
真剣な顔に頷き今度こそ背を向け歩き出した。
冬の夜道は少し物悲しいく思えるのは何故なのだろうか。すごく泣きたい気持ちに苛まれる。
悲しい気持ちを追い払うように早足で歩く。
すれ違う人達はこの瞬間、何を見て何をを思うのだろう。きっと皆それぞれの思いを抱え歩んでいるに違いない。
不意に人ならざるものの気配を感じ周りを見渡す。
ここでは被害が出ると踏んだ恵理香は路地へと足を早めた。
路地へ向かうため右を向いた途端、視界の端に薄オレンジ色の火の玉が通り過ぎる。その玉がビルに当たった瞬間大きな爆発と共にビルが壊れる。人々の悲鳴が聞こえてきて、ビルからはもくもくと炎が燃え上がる。
急いで路地に駆け込み印を結ぶ為に構えた。
薄オレンジの火の玉が向かって来たのを確認して結界を発動した。
「結、結、結! 滅」
火の玉を囲い一気に滅した。
恵理香は壁に隠れグループラインに今の状況を打ち込んで送信した。
真上に迫っている火の玉を察知して自分に結界を貼って回避するが、結界にヒビが入る。結界を解除して結界を足場にし、地面から離れた。空から見渡して見るが相手の気配を全く感じない。
「どっから攻撃してんだよ」
周りを見渡し呟く。
(どこだ、どこだ、どこだ、どこに!)
睨みつけるように辺りを見渡す。
(早くなんとかしなければ、攻撃してくるやつを早く見つけないと一般人が巻き込まれる。それはならない絶対に傷つけるわけにはいけない。早く早くしなければ!)
急いで周りを見渡す。
切羽詰まっているのか息が荒い。
「…………っ」
深く息を吸い目を閉じる。
目を開いた時にはもう冷静さを取り戻していた。
「 「ほんとその通りだよ」