第2章 夜明け
お客さんの入店に顔を上げる。
「いらっしゃいませー」
新しいお客さんにコーヒーと食事を運び終えたところで、蘭がレジに向かうのを見てすぐさまレジにつく。
「250円になります」
千円札を受け取りお釣りを返した。
「蘭さん、行ってらっしゃい」
「行ってきます」
店の外で掃き掃除をしていると向かい側の道にレイがいた。彼は手を振っているが敢えて無視して掃き掃除を続ける。
(ふらふらと一体何をやっているんだか。もしも成仏させられそうになったらどうするんだ?
……まあ助ける気はさらさらないが)
外の掃き掃除を終わらせ店内に入る。
マスターに昼まで休んでてくれと言われたので、外にぶらぶらと散歩しに行くことに決めた。
歩いていると前に毛利蘭と工藤新一を見かけた。
蘭の拳が新一の横にある電柱に食い込む。
「げっ」
また新一がいらんことを言ったのだろう。
この場面があるということは今日か明日には工藤新一として会うことは出来ない。
そっと見ていると新一くんと目が合った。呼ばれる前に角を曲がりその場から足早に立ち去った。
……これでもう関わることはないとそう思ったはずなのだが、自分の目の前には高校生探偵工藤新一が私を鋭い眼光で見ている。
「あはは、何か」
時刻は20時。高校生ならばもう家の中にいるはずなのだが。
「欄から聞きました。ここでバイトしてるって」
(げっ最悪! 可笑しいなあ、まだ黒の組織に何かされたわけじゃないよねえ? なんで睨んでるのこの少年は。ウチ工藤新一に怪しまれるような行動し………てたわあ、行動じゃなくて言葉でだけど。ウエッッ、これコナンになってもしつこく怪しまれるパターンじゃんかあ、早く誤解を説かなければいつか赤井や安室にチクられる。いやだいつか死ぬ、ストレスで)
「あの時大切な人を」
新一が聞こうとした時新一のケータイが鳴る。着信にケータイを取り電話に出る。
「どうした欄」
電話の相手は蘭のようだ。
「わあったよ」
少しムスリとしながら電話を切った。
「すみません、オレ帰ります。あの話はまた今度聞きたいので、また来ます」
新一は背を向け立ち去る。
新一の背が見えなくなると微笑んでいた口元をへの字に戻す。彼女の瞳はめんどくさいと語っているようだ。
「はあ、クソめんどくせえ」
」………っふっクスクスクス」