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名探偵コナン(光を抱いて)

第2章 夜明け


カウンター席の椅子に座っているとすぐ横で笑い声が聞こえて瞬時に口の端を上げる。

「マスターすみません、もう帰ります」

マスターはクローズの看板をかけに行くところなのだろう。もう店内にはお客さんはいなくて、静まり返る店内にはマスターと私の2人きりである。

「すみません。お客さんと話し込んでしまって、いやあ最近の子って元気ですよねえ。ああそうそう、あの子最近有名の高校生探偵工藤新一なんですよ。いやあ、すごいですよね、高校生なのに探偵なんて頭がいい証拠です」
「…………」
「ビックリしちゃいました。だって今や有名となった工藤新一が目の前に現れたんですから」
「………そうだね」

あまり反応を返してこないマスターに気づいて言葉を止める。
誤魔化すかのように口を開き言葉を並べるが口を閉じる。
歩き出すマスターを見て立ち上がった。

「あ、看板私が」

そう言うとポンっと頭に手が乗せられる。

「いいんだよ。後は俺がやっとくから、天月さんは早く帰りなさい」

少しシワシワな手で頭を優しく撫でられる。
見上げると悲しげな瞳とぶつかる。

「いいんだよ、何も聞かないから。でもね嬉しかった」

少し瞳を見開いて見るとニコリと笑っていた。

「じゃあまた明日、お疲れ様」
「お、疲れ様でした」


1人夕闇の道を歩く。
聞こえる足音は自分のものだけで近くには誰もいない。この世界で自分だけがいらない存在で、自分だけが取り残されて行く。

「お前たまには腹抱えて笑ったら? そうするとすっきりするぞ」
「違うよ。天月は笑うことよりも思いっきり泣いた方がいいんだよ。その時は胸貸してやるからな」
「ああそうだな。ただし服汚すなよ」
「泣いてもいい笑ってもいい。俺たちが全部受け止めるから」

2人がそう言って笑っている。
自分を挟んで言い合っている2人を交互に見る。
左にいる男は少し日焼けしたような肌にミルクに近い金色の髪で綺麗な緑の瞳。左を見た途端、彼の笑顔が憎しみの表情へと変わった。

信号が赤から青に変わり横断歩道を渡る。渡りきったところで視線を自分のカエル方角へ流す。
今さら寂しいなどとは思わないし、悲しいとも思わない。ただ
…………運がなかった。それだけのことだ。

「あ、夜ごはん、カレーにしようかな」

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