第2章 夜明け
ケータイショップから出ると暖かな風が流れるように吹く。
4月3日この世界に来て3日。
バイトはまだ見つかっていない。
コンビニのバイトなら募集中のようだが、それだけは嫌なのだ。
この世界でどうかは知らないが、私の世界では色々と問題になっているからである。
この世界でそんなニュースを目にしていない。
まだ問題になっていないのか、そもそもそんな事件はないのか。
部屋でケータイをいじる。
平成も終わったこのご時世にケータイ?
と言ってもこの世界は私からしたら過去だと言うことを思い出す。
「ああ、めんどくせえ、ガラケの使い方なんて知らんし、てかやりずらっ!」
「おい、ケータイ投げんなって」
「煩い」
「お前何イラついてんだよ。セーリ中か? 女の子の日ってやつか」
「違うわ!」
「じゃあなんですか? 何をそんなにイラついていらっしゃるんですか」
感情のこもっていない言葉で問われる。
「工藤新一と会ったんだよ、それが昨日。一昨日は毛利蘭」
「へえお前の事情は知らないけどさ、偽りのないお前で生活してったほうが楽な気もするけどな」
「そんな簡単じゃないんだよこの世界は、1番生きにくい世界に飛ばされたかも」
はあと項垂れながら頭を抱える。
「ふーんなるほど、まあお前の、世界からして見ればお前は生きづらいだろうな。でもよかったじゃん平和なんだから」
「は、平和だと? 殺人爆破殺人殺人殺人がか」
明るくホローしたつもりがつっこまれた。
「うん。全然平和じゃなかったは」
「この町おかしいから名探偵もおかしいから、死に神だから」
ぺらぺらと雑誌をめくる。
「なあに探してんの」
「楽でかっこよくてさらにめんどうごとに巻き込まれないようなバイト」
「お前わがままだな。で、かっこいいバイトって何」
「はあそんなのウチが知るわけないでしょ。馬鹿なの」
「お前が言い出したんだろうが!」
レイは恵理香の頭を殴る。
「いったあ何すんだよこのクソ幽霊! さっさと成仏しろ!」
「したくてもできないんですー、俺だって早く天国行きたいわ!」
「ふん。お前はどうせ地獄行きだよ。この状況をいいことにどうせあれだろ、お前自分が霊だからいいことに女風呂覗くんだろ、ああやらしいこのど変態幽霊が!」
「な事するわけないだろこの金欠ざむらい!」
「今気にしてること言うんじゃねえ!」