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分からないだけ

第2章 心の距離は月と地球よりも遠い


午前六時。

小鳥の鳴き声が聞こえる中、私は目を覚ました。
…流石に弟達は起きてないか。
辺りを見渡すと皆ぐっすりと眠っている。

「確か七時に起こせと言っていたな…。」

あと一時間、何をして時間を潰すか。

そんな事考えていたら薬研の眠っていた布団に目がいった。

  薬研が居ない…?


目が覚めて出掛けているのだろうか?
…私も暇だし、本丸の中で散歩でもしようか…


私は粟田口部屋から出て、右に曲がり庭が見える場所へ足を運んだ。

まだ朝だから皆寝ているのか、やはり静かだ…
昨日の夕餉の時はあんなに騒がしかったのに……


無意識に足を運んでいると、声が聞こえた。

主の声…?

少し騒がしいな…一体何をしているのだろうか…

声のするほうに向かうと、其処には竹林の広がった庭に一人、木刀を振る主が居た。


其処に立っている案山子の首を次々と落としていく。
主は汗まみれで息も荒くしんどそうな顔でそれをする。

その姿は、まるで夜叉の様だった。

足元に案山子の首が転げ落ちて足場が悪いのに主はそれを気にもせず、物凄い速さで最後の首を落とす。


「はぁ…はぁ…ゲホッ…」


主はその場で倒れ、過呼吸で空を見上げる。

大丈夫だろうか、私がその場から足を前に出そうとした時。


「大将、頑張ったな。
新記録、36秒で50体の首を落としたぜ。」


薬研が主の場所へ行き、優しく頭を撫でた。
その顔はとても優しい笑み。まるで妹を撫でる兄の様な顔で。


「…や、やった……
私、強くなった…嬉しい、やった…」


薬研が主の頭を撫でた瞬間、とても眩しい笑みをした。
あんな表情するのか、主は。


私はその場で二人を見ていると、不意に。


不意に主と目が合った。



不味い、不意にそう思った私は直ぐに戻ろうと思った。

だが、足が動かない。


「……薬研さん、そろそろ七時です。
朝礼の準備をしなければならないので。」


「ああ、そうだな。」


薬研は主に手を差し出し、「行こう」と言って、私と反対側の廊下へ走っていった。


…私も、弟達を起こしに粟田口部屋へ戻ろう。




道中、主の事について考えた。

本当に主は趣味で体を鍛えているのか…?

趣味としてはやりすぎな気がするが…






やはり、解せぬ。
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