第10章 シリウスー大人と悪魔とキスとー
「…嬢ちゃんが俺のアリスか。」
「…」
「そんな恐い顔するなって。な?」
「っ、触らないで。」
「触らなかったらくっついたままだが?」
大きな目をキッと吊り上げてシリウスを睨むアリス。それを笑いながら余裕で交わし宥めるように抱きしめるシリウス。初対面。
「ほら、離れただろ?」
身体が離れるとふっと鼻で笑われバカにされたような気分になる。アリスは眉間をグッと寄せた。
「手はくっついたけどな。行くぞ。」
有無も言わさず歩き出されアリスはその後をついて行くしかなかった。
「…」
シリウスの部屋に入ると手が離れそのまま彼はドカッと腰を下ろした。
「まぁ、とりあえず座れよ。」
「…」
警戒しながらもアリスはソファーへ腰を下ろす。
「嬢ちゃんは」
「っ、その、嬢ちゃんって言うのやめて。」
「不服か?」
「当たり前でしょ。そんな子どもでもないのに。」
「俺からしたら小娘だけどな。」
「っ、なんなの。ほんとっ、」
「そうカリカリすんなって。」
「っ、カリカリさせてるのはあなたでしょっ!」
「お?そうか?ごめんな。」
また鼻で笑われてる気がしてアリスは益々頭に血がのぼる。
「…意味わかんないっ、いきなり飛ばされて気付いたらこんなとこにいるしっ、」
「嬢ちゃんは知らないのか?交換の約束の話。」
「この歳になってあんな昔話信じろって方が無理な話でしょっ」
「俺よりは随分若く見えるけどな」
「っ、私は大人です。夢見てられるほど子どもでもないの。」
「でも実際嬢ちゃんはこっちの世界に来ただろ?現実に起こってるからあれはただの昔話じゃなかったってことだ。信じる信じないの話じゃないのは子どもじゃないからわかるよな?」
アリスがグッと息を飲み込む。
「ま、そんな意地になるなって。楽しくやろう、な?」
「っ、」
シリウスの言動や行動一つひとつがアリスの何かを刺激してイライラさせる。ワナワナと怒りが蓄積されてもう既に爆発してしまいそうだ。
ここからアリスとシリウスの一カ月がはじまる。
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