第3章 ルカーキスでふやけるー
ルールの紙が光る。
"15分間のキス"
浮き出た文字にアリスの喉がヒュッと音をたてた。
「…、はじまったね。」
ルカが呟くとアリスはすでに目をトロンとさせていた。
「…どうしたの?」
「…なんでも、ないっ…」
明らかに熱を孕んだ目。見てるルカの方が赤くなってしまうほど色気が溢れていた。華奢な肩を益々小さく縮こまらせて、いつか来ると夢見ていた自分だけのアリスが何かに耐えているのがわかる。
「…はじめるよ。」
時間がない。ルールは待ってくれないのだ。アリスの様子を気にかけながらも、ルカはそっとアリスの身体を引き寄せる。
「ひゃっ…」
大袈裟なほどビクンと反応して、アリスは顔を歪めた。ルカの唇がゆっくり、ゆっくり、アリスの唇へ近付く。
「っ、…っは、」
まだ、触れていない。なのにアリスの息は少しずつ上がって。唇が触れる頃にはまるで酔っ払っているかのように上気していた。
「…んっ。」
触れるだけのキス。
「っ…」
キュッと唇を閉じたまま頑なだ。
ルカは唇を離すとアリスを見つめる。
「…ねぇ、すみれ、くち、あけて。」
ルカがアリスに告げる。アリスはイヤイヤと首を振った。
「…どうして?…俺とキス、したくない…?」
「っ、ちがっ!」
「じゃあ、なんで…?」
「…それは…わたし、きっと、へんっなの、…」
「ん?どういう、」
「ルカが、目の前にいると思ったらっ、身体がへんなのっ、だからっ!…だから、きっと、ルカとキスしたら…」
「…キス、したら…?」
「…ルカが、引いちゃうかもって…」
目に涙を溜めて熱を持った瞳で見つめられルカは顔を歪める。
引く?誰が、誰を?ずっと待ってた。待ちくたびれて、それでも諦めきれなかった少女がここにいてどうして、何が起きて引くのだろうか。この子に何をされても大丈夫な自信さえあるのに。
「…ひかないよ。何が起きても。」
「っうそっ!…だってっわたしっ」
「絶対に、ひかない。…だから、すみれ、口、あけて。」
ゆっくり、ゆっくり。覚悟を決めてアリスが口をひらく。待てない、と言わんばかりにルカはがそこへ舌を差し入れた。
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