第6章 セスーキスと二重人格ー
ずっと待っていた。
この子を。
「アリスちゃーんっ、はいっあたしのこと抱きしめてみてっ?」
「…は、い」
スッと身体が離れて代わりに手が重なる。小さくて柔らかいその子の掌。
"二人っきりになる"
繋がった手を離すための次の課題が出されてセスがニコッと微笑んだ。好都合じゃない?なんて笑いながらアリスを見つめる。
「じゃあ、あたしたちもいきましょうか。ここじゃアリスちゃんとちゃんと話せないしねっ」
ウインクとともに歩き出してそして自室へ迎え入れる。二人っきりになると繋がれていた手が離れた。
「そんなに固くならないで、ね?紅茶でも入れるから一緒に飲みましょう?ケーキもあるわよ?」
緊張をほぐすようにセスが明るく話しかける。本当は震えたいのは自分の方だ。ずっと待っていた運命の相手がまさか現れるなんて。セスの心臓は純粋な嬉しさだけではなくこれから起きるであろう甘美な時間を思い描いて不思議な音を立てていた。
思い描いてた通りの、いやそれ以上の可愛い子。自分だけのアリス。
そこからアリスとセスは自己紹介をしたり他愛もない話をしたりしながらゆっくり打ち解けていった。
そして今からセスとアリスの一ヶ月間がはじまるのだ。
next