第15章 フェンリルー懐かれ過ぎのキスー未完成
フェンリルはなぜか両手を上に上げていた。まるで警察に捕まる前の強盗か何かのようだ。その体にピッタリとくっついた女の子がゆっくりと顔を上げる。
「…あなたが、私の、運命のひと…?」
見上げられそう問いかけられるとフェンリルが答えに悩む。
「…いや…」
もごもごとしてるに身体に衝撃がはしった。
「…会いたかったっ!」
いきなり抱きつかれフェンリルは思わずその身体を抱きとめる。
「っ、おい!お前っ」
「…ずっと待ってたんだもん。あなたに会えるのずっと。」
「…ちょ、…っ」
彼女の頭はフェンリルの胸よりも少し下にあり小柄なのがわかる。その小さな身体に目一杯力を込めて抱きついていることも。
「っ!?…おいっ、お前何してんだよっ」
彼女はフェンリルの胸に顔をスリスリと擦り付けていた。声をかけられ再び顔を上げる。
「ん?何って…確かめてるんだよ。」
ふふふとハニカムその顔に一瞬ドキッとしたがフェンリルはすぐに質問を返す
「…確かめるって、なにをだっ」
「んーとね、わたしの運命の人がね、目の前にいるっていう幸せかな?」
躊躇うことなくそう告げるその子にフェンリルは小さく息をはいた。
「…なんだそれ…」
「えへへ。…ねぇ、あなたも私のことギュってして?」
「…は?」
「ギュって抱きしめてって言ったのー。ねぇ、もうちょっと強くギュって。だめ?」
「…っ、課題クリアするだけなんだからこれで十分だろっ」
「えー、ケチっ。せっかく会えたのに…」
「ケチって…お前なぁ、」
「会えた記念にギュってしてよ。一回だけでいいから。」
その子の目は曇りなくキラキラ期待を持って真っ直ぐフェンリルを見つめる。1つ大袈裟にため息をついてフェンリルは抱き締める腕に力を込めた。根負けだ。
「ありがとうっ」
笑顔が眩しすぎる。
「…っ、」
フェンリルは何も言わずにその女の子から目を晒した。
ーコイツがオレのアリス
抱き合っている間出来るだけ冷静に状況を整理する。まさか本当に交換の約束が訪れるなんて思ってもいなかった。こんな奇跡が自分に起きるなんてーフェンリルは抱きしめた腕から伝わってくる体温を現実だと理解することに集中した。なかなか心臓の音が鳴り止まない。
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