第1章 A
「なんだ、セイバーから賄賂でももらってんのか」
「もらってません。マスターである私が聞くのもおかしいけど、クーはどうしてサードサーヴァントを承諾したの?」
「そうさなぁ、セカンドがいたから。だろうかね」
小さなテーブルに紅茶の入ったマグカップを三つ。リシェもアルトリアやクー・フーリンとともにテーブルを囲んでソファに座る。
「セカンド、エミヤがいたから?」
「こいつなら大丈夫とでも思ったんだろうな」
「当たり前です。我がマスターは契約を結んだ順番で贔屓するとは思えません。ランサー、あなたの勘が正しい」
三人同時に紅茶に口をつけ、同じくコトリとテーブルに戻した。
「私は一番だろうが二番だろうが三番だろうが、贔屓にするつもりも、マスターだからと言って偉ぶるつもりも、魔力を供給しているからって親顔するつもりもない。わかってくれているから、あなたたちは私と一緒にいてくれてる」
「えぇ、そうでなければ私は、マスターとして認めるどころか、真名すら悟らせなかったでしょう」
「俺は偶然にも、だからな。召喚に応じたわけじゃないから、すべて俺自身の判断。前のマスターから離れたことも、後悔はしてないぜ」
「ありがとうアルトリア、クー・フーリン」
ほっこり暖かい空気に包まれ、少しのこそばゆさからまた全員がマグカップを手にしたとき、ロック番号を知らなければ他人にはあけられない、リシェのマイルームの扉が開いた。
「エミヤ?」
「馬鹿者何をのんきなことを! 今すぐアーチャーを呼び戻せ、して戦闘用意だ、俺も手を貸そう!」
部屋へ押し入るように入ってきたのは、この部屋のロック番号を知っているキャスター・ギルガメッシュだった。いつものような威厳や余裕さがなく、怒りと焦りの表情で、彼女たち三人へ激を飛ばした。