第4章 D
「ミスター藤丸。敵が遠距離攻撃を仕掛けてこないとも限らない、できれば私の後ろにいてほしいのだが、不服かな?」
「いえ!よろしくおねがいします」
場慣れしているようだった。
ランサーとの意思疎通もこなれていて、信頼関係もしっかり出来上がっている。そう感じた。
「マスター。ちょっといいかね」
すぐ前に立ち戦況を見つめていたアーチャーが振り返り耳に顔を寄せてきた。
「いったい何なのだね、あのマスターは」
「見たことないわ。聞いたことも」
気にかかることが多すぎる。いつ攻撃が飛んで来るかもしれない、戦線を維持している彼らが崩れないとも限らない、横から援軍が来るとも限らない、隣でランサーを見つめている青年は本当に味方なのか?
「マスターッ!」
唐突にセイバーの声が飛んできた。
ハッと意識を声に向ければ、巨大な影がサーヴァントたちの処理が追い付かないほどに攻撃を飛ばしてきている。アーチャーは盾を展開し攻撃に備えているが、攻撃は横からも迫ってきている。
その一瞬は時が遅く見えた。セイバーは大本を叩くことを選択し、クー・フーリンは攻撃をできるだけ殺ぎつつこちらへ飛んで来ようとしている、アーチャーは盾を展開しつつ、片手でマスターであるリシェをかばおうと手を伸ばしていた。
「ランサーっ!」
そう叫んでリシェの意識を持って行ったのは藤丸。次の瞬間には強い魔力反応とともに何かに体を抱えられ宙を飛んでいた。
「きみ、大丈夫?」
「え、あ。うん」
「乱暴に抱えてしまったがけがはないだろうか」
「あ、はい。大丈夫です」
ランサーを令呪で呼び寄せたのだろうか。あの強い魔力反応、そうに違いない。貴重な令呪を使ってまで助けてくれたのだ。その恩に報いなければ。
「ありがとうございます、藤丸さん、ランサー」
「カルナだ」
「え?」
「オレはカルナだ。クラス名で呼ばれるのに今は違和感がある」
そんな簡単に真名を明かしていいものだろうか。とあっけにとられたが彼のマスターも止める様子はないし、むしろリシェとカルナが仲良くしているのを微笑ましく思っている様子までうかがえた。