第4章 D
翌日、朝起きるとすでにエミヤが朝食を用意しているところで、いつものソファには金のアーチャーの姿がなかった。
「おはよう、マスター。金のアーチャーならもういない」
「おはようアーチャー。うん、そうだよね。いつまでも一緒にいないよね」
「いずれまたどこかで会えるさ」
リシェが食卓に着くと、どこからともなくセイバーとランサーも席に着く。そのちゃっかりさにクスリと笑みが漏れた。
「なぁに笑ってんだよ」
「いやあ、みんなのんきだなと思って」
「のんきでいいじゃねぇか。いつも気ぃ張ってたら疲れるだろ?」
いただきます。と両手を合わせ全員が席について英気を蓄えた。
準備ができ次第街へ戻る。と誰ともいわずに彼女たちは町を目指していた。
「たったの一日で何が……」
「街が、壊滅」
高台から見下ろした街はどこかしこから火の手が上がりがれきの山と化し、咽び泣く声や逃げ惑う人々が小さく見えた。
「マスター、あそこ。サーヴァントとマスターじゃねぇか?」
ランサーの指す方向。ぼんやりとだが二人の人影が見える。人間の目にはわからないが、アーチャーである彼にはよく見えているようだった。
「赤いランサーとその隣の男は、間違いなくマスターのようだ。手の甲に令呪が見えた。あちらもこちらを見ているようだが」
「せ、戦闘の意思はありそう?」
「いや、無いようだ。こちらへ来るぞ」
遠めに見てもものすごいスピードでこちらに向かってくるのが分かった。
セイバーはいつものようにマスターを背にかばい、ランサーは一歩前へ、アーチャーはマスターの後ろに控える。
「おぉーい!大丈夫?」
思っていたものよりもだいぶフレンドリーな声掛けに少し拍子抜けをした。
時計塔では見たことのないマスターだった。連れているサーヴァントの真名にあては付きそうになかったが、白髪に胸元には赤い宝石が埋まっている。金の鎧に鋭い目つきが少し恐ろしいと思った。