第4章 D
「セ、セイバー!」
「マスター? まさか敵襲」
「ちがうよ! だいじょぶ、ちょっとびっくりしただけ」
ナイスタイミングでお風呂場から出てきて、ホッカホカですっぽんぽんのアルトリアとばったり。
びっくり? と首をかしげるアルトリア、ずっと顔を俯けたままのマスターを不思議に思いのぞき込むが、リシェは必死に赤いだろう顔を背け続ける。
「……マスター。お風呂に入るのなら背中を流してあげます」
「え? い、いいよ。アルトリアに、というか騎士王に背中流してもらうなんて贅沢すぎる」
「たまにはいいじゃありませんか」
ほらほら、とリシェはアルトリアに身ぐるみはがされ、えーい! と風呂場になげこまれた。
じゃばじゃばとお湯をかけられ、あれよあれよという間に泡だらけになっていく二人。他人に体を洗われるくすぐったさに笑い声が響く。
「ようやく、笑ってくれましたねマスター」
「え?」
「いいですよ。言い訳も弁明もいりません。気が付かなかったというのなら、それでいい」
リシェを背中から抱きしめるセイバー。触れ合う素肌が変な気を起させそうな気もするが、マスターを気遣うセイバーのやさしい腕に、リシェはほうっと息を漏らした。
「ねぇセイバー。きっとこれから今まで以上に大変な戦いになると思う。守り切れないかもしれない、死んじゃうかもしれない、でも私は、勝ちたい」
「約束します。愛しいあなたに、勝利を」
ほほを寄せ、ぬくもりを感じ、強く相手を信頼する。
「あのキャスターの忠告は信じることにしましょう。警戒して損はないはずです」
「うん。とにかく、最終目的は親玉を探してたたく。明日からは手掛かりを探しに」
「えぇ。気を抜かずに行きましょう、ねっ!」
「うわぁ!」
ざばっ! と風呂桶にくんだお湯を遠慮せずにリシェにぶっかけたアルトリア。二人仲良く泡を流し、湯船につかり、満足して上がったころにはセイバーはゆでだこで、リシェがようやくリビングまで引きずっていったのは主従を考えさせられた。