第3章 C
季節は秋、アルトリアと手をつないで歩くリシェ。
二人の格好は冬に向けて寒くなりつつある季節にぴったりの服装。その後ろをまるでガードマンのように歩く男三人も季節感のある格好。道行く人々が通り過ぎる度振り返ってゆく。
「では、郊外まで歩いたら作戦通り」
「我のヴィマーナを飛ばすのだろう?」
「すまないが、俺たちはそれに乗せてもらう。マスターは」
「はいはい。疲れたら言う、でしょ!」
ギルガメッシュ王の所持する黄金のジェット機ヴィマーナ。郊外に出、人がいなくなったところを見計らって一行はそれに乗り込み、エミヤが見つけた霊脈へ向かう。
ギルガメッシュに魔力を提供するためにリシェは、恐れ多くも王座に座る彼の膝の上。
「寒くはないかマスター」
「はい、平気です」
「望めばすぐに用意してやろう。その時は遠慮なく申すがよい」
玉座に腰掛ける姿は様になっているが、その膝に防寒をしてちょこんと腰掛けるマスターがなんとも言えない対比を生み出している。
「こうやって景色を見ながら飛ぶのは初めてです」
「そうか。我が初めてか。いや、急を要して飛んだのだろうな」
「はい。ずっと、世界を守るために戦っていますから。それはアーチャーとアリスも一緒じゃないですか?」
「アリスは、時折暇を作っては我と一緒に世界をめぐっていた。あの狭苦しい時計塔では息が詰まるとな」
「へぇ。アリスって旅行が好きだったんですね……」
王の魔術のおかげで寒い風は打ち付けないものの、冷たさを取り除かれた少しの風は前方から吹き付けてくる。
自らの膝に収まるマスターに、ふいとその頭に手が伸びてしまった。
「よく貴様のことも話していた。良き友人であったのだろう」
幼子を慰めるように、風で乱れる髪を押さえながらやさしく何度も撫でてしまった。黙ってそれを受け入れるリシェ、大切な友人を失った悲しみで溢れそうになる涙をこらえるので精いっぱいだ。
「あまり悲しんでやるな。笑顔が素敵だと褒めておったのだから」
「はい。はい……ありがとうござます」
耐え切れず震える肩を抱きしめ、溢れてきた涙をギルガメッシュはぬぐい続けてくれた。
「すみません、アーチャー。お手を煩わせてしまって」
「良い、赦す。今回ばかりはな……」