第2章 B
「どうした金のアーチャー」
「赤のアーチャーよ。いつもなのか? この痴態は」
「あぁそうとも。貴殿がべた褒めされて惚れ込んだリシェというマスターの本当の姿だが?」
「……ふむ。それを我にしてくれるというのなら、フォースサーヴァントに成り下がっても悪くなかろう」
「どういう神経だよ。食事中にのぞき込まれるなんて俺はまっぴらごめんだね」
はん。と鼻で笑いながらエミヤ特製オムライスにスプーンを突っ込むクー・フーリン。
アルトリアに夢中で聞いていないだろうと高をくくっていたが、そこは聞き耳を立てるのが上手な女子らしく。
「どれどれ、クー・フーリンも食べてごらん? 上手ねって褒めてあげるよ」
「うわっ! いいっつの! 飯くらい俺の好きに食わせろ!」
リシェに近いお誕生日席に座るクー・フーリン。ぐいと覗かれ、驚きと恥ずかしさに心臓が跳ねた。
「驚く顔もかわいいぞクー・フーリン」
「やめろマスター気持ちわりぃ。おら、さっさと食わねぇと冷めるぞ」
「はいはい。素直じゃないな」
今まで滞ることがあまりなかったマスターからサーヴァントへの魔力供給。リシェの前で、必要な食事をする彼らが珍しく、どうしても気になるらしい。
ニコニコと楽しそうにアルトリアの顔を覗き込みながらオムライスを頬ばっている。
「ところで、食事中で悪いが。あまり遠くないところに霊脈を見つけた。そこで拠点を展開し、魔力を補給してまた動き出そうと思う。問題はないだろうか」
「ありません」
「ねぇよ」
「我はそこまで付き合おう。そこから新たなマスターを見つけに動く」
「では、明日。準備が整い次第出発する」
夕食の片づけはエミヤ。順にシャワーを浴び、リシェとアルトリアは寝る前のホットミルク。
クー・フーリンとギルガメッシュは今夜限り。と互いに無礼講で酒盛りに興じている。エミヤは明日のお弁当の仕込みをしている。
「ランサー、飲みすぎでは?」
「んだよセイバー水差すなよ。せっかく王サマが酒を振舞ってくれてるんだ。飲まないわけにはいかねぇさ」
「セイバー、貴様もどうだ。まさか、我の酒は呑めないというわけではあるまい?」
「お酒ぐらい呑めます! アーチャー杯を!」
「呑みすぎるなよ」