第2章 B
わいのわいのとあっという間に酒盛りが始まってしまった。呆れるエミヤとアルトリアがお酒なんて珍しい! とそれを肴にギルガメッシュ王のワインをちびちびと飲むマスター。
「やはりこうなったか」
腰に手を当て呆れるエミヤ。その視線の先には酔いつぶれたアルトリアと彼女に寄りかかって眠るリシェ。今にも眠ってしまいそうなクー・フーリン。目の座ったギルガメッシュ。
「ますます気に入った」
「マスターのことなら今回ばかりは諦めてていただきたいな」
「まるでウルクでの宴のようだった。美しい女とうまい酒、見事なものだ」
「ギルガメッシュ王。もう寝たほうがいい、相当な酔い方だぞ」
「お前たちは幸せ者よ。よいマスターと巡り合った」
目を細め微笑むギルガメッシュの視線の先には酔いつぶれた三人。
「我が先であったなら、即決だった」
「隣の芝生は青いものだ。さぁ、寝た寝た」
王は立ち上がり、酒も杯もそのままにして自らの寝室へ。
エミヤは散らかったリビングを片付けながら、うつらうつらと舟をこいでいるクー・フーリンをたたき起こす。
「ランサー。セイバーとマスターを寝室へ運んでくれ。それから寝たまえ」
「ってーなー。あーはいはい」
くあ。と酒臭い大きなあくびを一つ、それから両脇にアルトリアとリシェを抱え、彼女たちが二人で使う寝室へ入っていった。
ふと気が付いたのはエミヤがリビングを片付け終えてからのことだった。ランサーが女部屋から戻ってこない。
「ランサー」
半開きになったままの扉から静かに声をかけ覗いてみると、二つのベットにきちんとセイバーとマスターを横たわらせ力尽きたようで、扉横の壁を背にランサーが寝落ちていた。
「まったく」
自分はこいつらの世話係だったろうか? と錯覚してしまう時がある。
戦闘など後回しで、まるで執事だなとエミヤは一人笑って、静かに扉を閉め自分も床につこうと大きくため息をついた。