第2章 B
リビングのソファにだらしなく寝そべったまま、エプロンを片手にするエミヤに噛み付くクー・フーリン。
どんな状況にも冷静に対応し、幾度となく困難を乗り越えてきたリシェ。その冷静沈着で回りをよく見ており、その上状況を判断したうえで指示を飛ばすことのできる強い意志。
正式に召喚されたメインサーヴァントであるアルトリア・ペンドラゴンはそれを見抜き、メインサーヴァントとして契約。
クー・フーリンもまた彼女の意志の強さやマスターとして見込みがあると確信し、惚れ込み、ついていきたいと願った。
腑抜けで強欲。戦闘では常に攻撃を受けないところを探し、戦闘が終われば出てきて戦った風を装う、クー・フーリンの前のマスターはそうであったらしい。
だまされたと常に心で思っていても、契約を破棄することを一番最初に令呪で禁じられた。
「見限られるぞ?」
「はん! 俺なりに役に立ってるつもりですよ」
二人はマスターに自らこうべを垂れ、彼女についていくと決めた。
しかしエミヤは少し違う。リシェにその腕に惚れたのだ。そう、その料理の腕に。エミヤは懇願され彼女のセカンドサーヴァントになったのだ。
エミヤはその腕を振るうためキッチンに立った。
「夕食だぞ」
エミヤの声にセーフハウスに集っている全員がダイニングへ集まった。
「食事ですか」
「少しでもマスターの負担を減らすためだ。オムライス、嫌だったか?」
「いえ! とてもおいしそうです」
目をキラキラさせるアルトリア、大好物を前にした子供のようで
「かわいい」
「マ、マスター。そんなにのぞき込まれては食べにくい」
「気にしないで食べてよ。おいしーって顔するアルトリアが見たいな」
まるで恋人同士のように隣同士の席に座りイチャ付くリシェとアルトリア。それを向かいの席に座ったギルガメッシュが、驚いたような引いたような目でじっと見つめていた。