第2章 B
「お前たちのところは偵察から戻れば必ず抱擁をするのか?」
「んなわけねぇだろ。あれが許されるのはセイバーだけ。俺たちはせいぜい握手ってところかな? マスター?」
「かわいいは正義よ」
「ありがとうございますマスター。もう大丈夫です、報告のためにリビングへまいりましょう」
セイバーに手を引かれたリシェを先頭に、庶民的な広さにもかかわらず、調度品は一級物のリビングへ。全員が座ったところで午後三時の会議が開かれた。
「町に被害は出ていませんが、ほかのマスターを見つけることはできませんでした。時計塔にはあの巨人のような黒い霧をまとったエネミーが数体確認できました。ほかの魔術的施設に連絡を取ろうにも難しい状況です」
「俺がいた支部はまだ無事なようだったが、あれから一日たっても増援が来ないことを鑑みれば、あちらでも何かあったに違いない」
「頼れるとしたら、魔術協会か?」
「聖杯戦争でもない限りあそこは受け入れてくれないのでは? それに俺はあまりいい印象はない」
「その前に、戦闘に備えて霊脈を見つけ、そこで魔力供給をするのが先決ではありませんか? 現に私は戦闘ができるような状況ではありません、マスターの負担も相当なものでしょう」
「そうだな。では俺が探すとしよう」
よろしくお願いします。とアルトリアはきっぱり言い。お茶菓子に早速手を伸ばしている。
クー・フーリンは探索は俺の領分じゃない。と決めつけソファで昼寝をしようと三人掛けのソファーを独り占め。
ギルガメッシュは興味をなくしたのか、キッチンからワイングラスを一つ持ち、自らの宝具から高級なワインを取り出し部屋にこもりに行ってしまった。
「手伝おうか?」
「そうしてもらえると助かる。地図が部屋にある、探った個所に印をつけてもらえるだろうか? マスター」
「もちろん」
リシェとエミヤは彼に割り当てられた部屋へ。
「マスター。なるべく魔力消費は最小限に抑えるが、つらくなったら遠慮なく言ってくれ」
「はーい」
それから夕食の支度までの時間、目を閉じ魔力を外へ巡らせるエミヤと地図にバツ印を書き込むマスターの静かな声だけが聞こえていた。