第2章 B
「我が気に入ったマスターだ、あやつは。お前にないものを持っていた。よいマスターであったことは間違いない」
「……ギルガメッシュ王、おこがましいですが。私ではなく、新しいマスターを見つけてください。あなたをフォースサーヴァントにはできません」
はっきりと言い切ったリシェに、驚いた顔をするギルガメッシュ。すっかり洗い物を終えたエミヤが大きなため息をついてから口を開いた。
「俺はセカンドサーヴァントだ。ほかの英霊は最も嫌う。サード、フォースで契約したなどほぼ聞いたことが無い。俺にもマスターにも理由があって契約を結んだ。サードであるクー・フーリンも明確な理由があって契約を結んだ」
「あんたはどうだ?明確な理由はあるか?」
彼、英雄王ギルガメッシュという英霊。妻にしたいほど気に入っているからといって、フォースサーヴァントなるには抵抗はあるはず。そもそも、マスターであるリシェにとってフォースサーヴァントを契約するのは不利益だ。
「何基もサーヴァントを従えているのは、理由があるということなのだな?」
「はい」
「しかし、四基目と契約する理由がない」
「はい」
しばらくの沈黙のあと、ギルガメッシュは笑い出した。
「ハハハハッ! マスターとサーヴァント、意味なく契約することはない。お前にはお前の理由があってマスターなのだな? あいわかった。契約は成立しなかった。今は致し方なかろう」
「ごめんなさい、アーチャー・ギルガメッシュ」
「良い、赦す」
少しばかり緊張したこの場、ほっと息を吐いたところで夜までには戻ると言っていたセイバーが戻ってきた。
「ただいま戻りました」
「アルトリア! お帰り! 魔力が足りないでしょ?ぎゅってしてあげる」
「マスター! お目覚めになられたのですね。えぇ、少しばかり疲れました。少しでいいので、その、ぎゅってしてください」
ずっと緊張した面持ちだったリシェは、アルトリアの声を聴いたとたんパッと笑顔になり、玄関まで駆けて行った。
玄関先でリシェはアルトリアと抱き合い、おかえりの抱擁とともに魔力供給。エミヤとクー・フーリンは状況を聞くために、ギルガメッシュは興味本位で玄関へ出迎えに出た。