第2章 B
立ち上がりエミヤの後を追おうとしたが、ふらつき転ぶところだった。
「おっと、あぶねぇ」
「む」
二日何も食べていないのだ、体に力が入らなくて当然。ランサーの反射神経に助けられた。
「ありがとう、クー」
「何のこれしき。ついでにダイニングへお連れしますよ」
「よろしくお願いします」
「おい! それは我の役目だ」
そのまま抱えられ、起きたのなら次は飯だろうと先読みしていたエミヤがすでにうどんを作っていた。
「まったく。旅行に来てるのではないのだからな」
テーブルに着けば、コトリコトリとおいしそうなうどんが用意されていく。
「四つ? ご飯を食べるのは私だから」
「いや。はっきり言ってリシェだけの魔力では四基のサーヴァントを賄えない。今までのように三基までなら問題はなかっただろうが、四基となれば話が違う。それで、各々で解決するために、食事という方法をとることにした」
「そー言うわけで。いただきまーす」
テーブルに並べられた四つのどんぶり。エミヤの生まれた国に倣って「いただきます」と両手を合わせお箸でうどんを頂く。
ずずずず。うどんをすする三人のサーヴァントとそのマスター。
「アーチャー」
食事を終えエミヤとクー・フーリンが洗い物をしている後ろで、番茶で一息ついているリシェが金のアーチャーに話題を振る。
「あの時とっさに契約を結んだけど、よかったの?」
「良いに決まっている」
「そうじゃない。アリスを、あなたのマスターを、その、失って」
エミヤとクー・フーリンが聞き耳を立てているのがわかる。相手はあの英雄王ギルガメッシュ。彼の心の内を教えてほしいという無礼極まりない質問だ。
マスターになったとはいえ、あれは例外中の例外の契約、少し落ち着いた今、契約前にするべき対話を今しようというのだ。