第2章 B
「それでこうなったと」
「仕方なかろう! そもそもこうなる運命だったのだ、我はリシェのサーヴァントに、リシェは我のマスターになる運命だったのだ」
「そんなわけあるか。いいか? これはマスターの慈悲だ、くれぐれも変なことするんじゃねぇぞ」
閉じた瞼の向こう側でアーチャーとアーチャーとランサーの声がする。
「変なこととはなんだ、具体的に言うてみろ。ほれほれ」
「ここで言えるかボケ」
「よさないか二人とも。今は少しでも戦力があるほうがいい、考えるべきは魔力をどう確保するかだ」
体に感覚が戻ってきた。ゆっくりと瞼を持ち上げると赤いアーチャーの顎がまず目に入った。
「戦闘の度こう倒れ……気が付いたか、マスター」
「おぉ、我のマスター。目覚めたか、気分はどうだ」
「気分はって、お前さんが傷の治療のために魔力を持って行っちまったんだろうが」
吠えあうランサーと金のアーチャー。いったい何がどうなっているのか、ここはどこなのか、どうやって赤のアーチャーは戻ってきたのか。
聞きたいことは山ほどあるのにうるさい。
「だまらんか!」
アーチャーの一喝でさすがの二人のも静かになった。そこですかさず、どうして? と一言。
「まず、ここはアーチャーが……英雄王が持っていたセーフハウス。結界も張り、一応ほかのサーヴァントや魔術的なものから感知を逃れられるようにしてある。セイバーは偵察に出ている。夜までには戻ると言っていた」
「結界があるのね」
「あぁ、マスターの魔力を借りて、だがな。だから無理はするな」
「アーチャーは? どうやって戻ってきたの」
「原始的な方法だ、走って戻ってきた。あの襲撃はおとといのこと、俺がここへ着いたのは昨日のこと。あれのことはまだ不明だ」
怒涛の説明だったが知りたいことは何となくわかった。
「強固な結界でな、並大抵のことでは破られん。我と愛をささやくでも誰に聞かれることはない」
「誰にも聞かれない」
「うむ。だから存分に思いのたけをぶつけるがよい」
エミヤはため息をついて立ち上がり別の部屋へ、クー・フーリンはギルガメッシュを止めようとまたかみついた。
「それなら。アーチャーだと紛らわしいから」
「良い、我の名を呼ぶことを許可しよう」
「エミヤ! お腹空いた!」