Instead of drink 《テニプリ越前 リョーマ》
第3章 夕暮れ
ザッと靴の裏が砂をふむ音が傍で聞こえ、僅かな風圧がを包む。
顔を隠しながら隙間から視界を広げる。
そこには片膝を地面につきしゃがみこんだリョーマの姿があった。
まずい……は、咄嗟にそう思った。
顔を上げるタイミングを逃した。
放っておいてほしいなどと思っておきながらリョーマがアクションをしてくれるのを待っている。そうすれば自然に顔をあげられる。
彼のアクションを待つその時間を持て余すようには指をもじもじと動かす。たまに呼吸を深くして唇に力を入れる。
カラスが鳴いた。
顔を伏せた下に広がる視界が先程よりも暗くなった気がした。
もう帰る時間だ、日が落ちる。
自分はいいけれど、彼は。リョーマは学生なのだから。一瞬また年の差を考えたが今はもっと違うこと。
どうしよう、早く、早く何かしてほしい。
「いつまで そうやってんの」
公園に隣接する道路に車が走っていく。
ライトを照らして。
あたりの住宅にも徐々に明かりが灯っていく。
2人きりのこの時間と場所を強調するように。
白い光の枠の中から浮かび上がるように。
「帰るよ」
少し低めの声でリョーマが言った。
身体を包み込むの手にリョーマが触れる。
それがまるで合図だったかのようには勢いよく顔を上げた。
「……桜乃ちゃんと…っ ここに、いたよね?」