第16章 ◎それはやっぱり-雅紀-side
香織ちゃんはそんな俺を見て、
少しふふって笑って口角を上げてた。
「相葉さんって本当にイヤだ」
「え?」
「敵わないですよ。そんな笑顔で……
そんな風に言われちゃったら……私、もう」
「ご、めん」
確かにそうだよね。
これはズルいか。ズルいよな。
「はぁ…………知りませんからね?
後悔しても私もう振り向きませんから!」
「え?」
「相葉さんが弱気だったから同情したんです
その……子犬を見つけたときみたいな?
だから…………そんな狂犬はいりません!」
思わず必死にそう言う香織ちゃんが
本当に可愛いって思った。
この子は本当に良い子なんだ。
「俺…………行ってもいい?」
「……………いいですよ。首輪外しますから」
「……………ありがとう」
そう言って立ち上がると、
香織ちゃんはある質問を投げ掛けてきた。
「私のこと一瞬でも好きだって、
そう思いませんでしたか?一瞬でも……」
「………………思ったよ、正直」
「そっか……じゃあまだ泣きません
ちゃんと失恋してから涙は流す主義なんで」
それに続けて、香織ちゃんは
ニッコリ笑って……
「いってらっしゃい」
そう言った。