第2章 ◎動き出す時間
一瞬、止まった時間
雅紀の顔が一瞬、固まって動かなくなった。
でもすぐにそれは緩んで笑顔に変わった。
「……よかったじゃん!
が結婚かぁ……綺麗だろうね!」
「……まだ決まったわけじゃないよ」
なんとなくそうやって否定したくなった。
なんでだろう。
「でもの返事は決まってんでしょ?
じゃあ決まったも同然でしょ!」
「…………わかんないよ、まだ」
あ、そっか。
動き出した時間を私は止めたいんだ。
壊れた時計ならそのままにしときたいんだ。
「わかんないから……まだ」
「…………なに真剣な顔してんの!
わかったから!っつーか帰るね?寒い!ヒャハハ」
雅紀は体をさすりながら、
私にそう言って手を振りながら車の中に入った。
これが31歳の2月
少し時間が動き出したそんな日