第1章 プロローグ・始まり
クビになった理由を聞いてみても自分の身に覚えのない事ばかり上司は吐き散らし、その後は早く出て行けとばかりに鞄やらの私物を投げられ。
彼氏の方にも理由を聞いてみたがこちらの方は至ってシンプルな理由で"飽きた"と言われてしまった。
飽きたってなんだ。10年も付き合っておいて。結婚しようね、なんて何回も言ってきたくせに。そんな言葉が溢れすぎて、口に出すにはまずどれからがいいのか…なんて考えていたら早々に電話を切られ慌てて折り返しても"着信拒否"をされてしまったおかげで連絡が取れなくなってしまった。
そんな事が立て続けにおき、どうしたら良いものかもと頭を悩ませながら歩いていた帰り道。
立て続けに起きた不幸に肩と気分を落とし歩いていると家に近づくにつれ騒がしくなってきて走って家へと辿り着けばーーこの有り様だ。
炎を覆い美味しそうにそれを燃やしつくそうと咀嚼する様は本当にモンスターのようだ。あぁ、これが夢ならいいのに。そんな事を思いながら途方に暮れていると、不意に嫌な音が炎の中からきこえてきた。
みしみし、ばきばき。
その嫌な音は小さなものから大きなものへとかわりーー不意に、炎が大きく揺らめいた。まるで炎が笑ったかのように見えて、ぞわりと寒気に襲われる。
と、その瞬間ーー
「……え?」
がたがたがた、と一際大きな音が辺りに鳴り響き炎の中から木材が飛び出してきた。まるでモンスターから逃れるため決死の覚悟で飛び出してきたかのようなそれは、私目掛けて一直線に降ってきてーー
そこから先の意識は、ない。