第39章 ただ寄り添うだけで、伝えられていただろうか。
ここでの生活で体力も気力も衰えてしまったエリナ。
寂しげな広い部屋に孤独で不条理な日々。
決まった時間に献血、食事。
魔術の文言とその内容を全て明かした後は、植物との関係性や指輪について問い詰められる日々。
政府は文献でも魔女の知識は頭に入れていたが実際は想像を絶する威力と神秘に日々発見と新事実で嬉々している。
それでも手荒い扱いではなかった。
なぜなら死なれては困るから。
ただ指輪も武器も奪われたエリナは何も抗う事は出来なかった。
この絶対的な支配に。
「ロー…みんな…、会いたいな」
毎晩眠れない。
今夜もこうして窓から見える満月にそっと願いを寄せる。
そういえば船が襲われる前日の晩もこんなに月が綺麗だった。
あまりにも綺麗だったからローも見てよって言ったのに、いつまでも本から目を離さなかったんだっけ。
今は奪われてしまったあの日々。
楽しかったな…
こうしてみんなの事を思い馳せると出るのは涙だけ。
誰のせいでもない。全ては自分のせい。
あの時油断してしまった。
いや、バーソロミューを前に身体が悟ったのかもしれない。
一族最後の末裔である私が捕まる。
なんて生き恥、来世まで恨まれる事は間違いない。
世間はどうなっているんだろう。
もしかしたら私の捕虜を非公開にしているかもしれない。
だとしたらなんて卑劣。
ただただ己の失態を後悔、苦悩する日々が続く。
ロー
みんな…
今頃何してるの?
助けに来て欲しいなんて言わない。
元気で無事で居てくれれば。
それだけで良い。
ただ寄り添うだけで、私は伝えられていただろうか。
貴方が大切で愛していること。