第37章 必ず迎えに行くから
皆は何が起きたのか分からなかった。
ただ言えるのはエリナが忽然と消えた。
「…エリナ?」
「……おい…何が起きたんだ…」
立ちすくむクルー達。
しかしバーソロミューの攻撃は止む事無く向けられる。
「ぐあっ…!」
「シャチ!」
攻撃を真に受けたシャチを見てベポが声を荒げる。
「この…ッ!アイヤー!」
ベポがバーソロミューへ渾身の蹴りを入れる。
少しぐらついたようだったが、何故かぐるりと踵を返し船へ戻って行く。
「待て!エリナを返せ!」
「畜生!エリナをどこへやった⁉︎」
バーソロミューが船へ戻ると、その距離は大分遠のいてしまった。
「ロードナイトの身柄は確保した」
「了解、ターゲット確保!直ちに撤退」
僅かに残った海軍の船数隻が方向転換をしているのが確認出来る。
「エリナはどうした⁉︎どこへ行った⁉︎」
一部始終を見ていたローが血相を変えて海軍等を睨みつけている。
「…キャプテン」
「畜生…ッ!」
ローは海軍の船に飛び込みバーソロミュー目掛け愛刀鬼哭を振り払う。
すると、バーソロミューさえその刹那、消えてしまった。
鬼哭の太刀筋は船、それから残る海兵諸共全てを斬るがそこにバーソロミューの姿はない。
「なんだ⁉︎どこへ行った⁉︎」
焦りを浮かべ困惑するロー。
辺りの海兵は倒れ、先程までの騒々しさは消え船上は不気味な程静けさが漂う。
「おい…ふざけるな…エリナ⁉︎」
エリナーーー!!!!!
ローは憎いほど晴天の空を仰ぎ、精一杯叫んだ。
「キャプテン!3時の方向から更に海軍が来た!!」
どこから湧いたのか別の部隊が続々と自分達を標的に攻撃を仕掛けているのを確認出来る。
船は黒煙に包まれていた。
ローは決断をする。
「…潜水しろ」
「えっ⁉︎でもキャプテンエリナが⁉︎」
「助けに行かなくていいのか⁉︎」
その指示にクルーは戸惑う。
だがキャプテンは冷静にこの場を読んでいた。
「いいから一先ず撤退だ!これ以上の戦闘は無駄だ!」
皆エリナの行方を心配しつつもローの気迫を前に大人しく指示に従った。
タイミングを図りハートの海賊団は潜水を開始した。