第35章 俺はあいつを裏切れねぇ。
翌日エリナはペンギンに伝言された待ち合わせ場所に来ていた。
カフェのテラス席でその人物を待つ。
それはジュリアさんだ。
昨日の一件から正直ジュリアさんとはどんな顔して会えばいいのかわからない。
まして向こうからの呼び出しで一体何を言われるんだか。
エリナは少し緊張していた。
暫くするとカツカツとヒールの音がして明るい声を背中で受けた。
「エリナちゃん」
振り返るとジュリアさんが。
小さく会釈して斜め向かいに腰掛ける彼女の様子を目で追う。
「あ、すいません珈琲二つ」
通り過ぎた店員にオーダーを済ませジュリアはふぅと息を吐いた。
「ごめんね急に呼び出しちゃって」
「いえ」
二人は目線を下に落とし沈黙が流れる。
それを破ったのはジュリアだった。
「私…きっぱり振られちゃった」
ジュリアさんの顔は悲しそうな、だけどどこか晴れやかそうな。
ねぇロー…私達やり直せない?
これで断られたら諦めがつくから。
だから聞かせて、貴方の思いを。
悪りぃがお前とはもう…昔の話だ。
俺はあいつを、裏切れねぇ。
……そっか。
じゃあ最後に…こうさせて。