イケメン戦国~天下人の妹になる気はないか~ 番外編
第5章 秀吉の暴走
「......待て、貴様ら」
後ろから威厳のある声。
振り向けば、すでに愛刀のへし切長谷部を抜刀している無表情の信長様が。傍らには三成が控えている。
「...何勝手に殺ろうとしている」
「「...申し訳ありません」」
...嗚呼、そうだった。一番キレてる人間が居たじゃねぇか。
俺よりも、秀吉よりも、誰よりもデカイ怒りを抱えてる、雪月の『兄』が。
「...我が妹に手を出して、楽に死ねると思うな」
男のことは信長様に任せ、秀吉と三成と共に外へ出た。
「...雪月の様子は?」
幾分か落ち着いたらしい秀吉が聞いた。
「家康様によると命に別状はなく、先程目を覚まされたそうですが、すぐに眠ってしまわれたそうです」
「光秀は?」
「出血が思いの外少なかったようですが、絶対安静だそうです」
「そうか...」
あの笑顔が失われるところだったと思うとぞっとする。それは戦場で部下を失うことよりも、もっと恐ろしいと思う。
(...にしても、)
気になるのは、雪月を狙ったという男。南蛮の着物に見たことのない獣。確証はないが、見たことのない獣とはぽけもんのことなのか?
(雪月や佐助以外にも、異世界とやらから来た奴でもいんのか?いやまさか、な...)
そんなあり得ない発想を頭から打ち消した。
雪月を狙った男について考えていたせいで、もう一人の実行犯がどうなったか、結局わからずじまいになっちまったのは...まぁ、いいか。