イケメン戦国~天下人の妹になる気はないか~ 番外編
第5章 秀吉の暴走
まだ外に出たことがない雪月。
まさか城下には居ないだろうと思ったが、念には念をということで秀吉と探し回った。
...とは言え、まだ雪月のことは城下の人間には伝わっていない筈。
『狐耳と狐の尻尾が生えた白い娘見なかったか?』なんて聞けるわけない。だから『白い子狐見なかったか?』と聞いて回った。
...だが、やっぱり見つからない。隣にいる秀吉がイライラしているのが手に取るようにわかる。
「くそっ、ここも駄目か...」
「一旦城に戻るぞ」
「おう」
城に戻っても、やはり雪月は見つかっていなかった。
「これだけ城下を探しても居ないとなると...」
「まさか、他国に連れてかれたか?」
「...そんなことは信じたくないんですけどね...」
そんな時だった。
「...家康、いるか?」
俺達と別の場所を探っていたらしい光秀が戻ってきていた。
...左肩を真っ赤に染め上げて。
「光秀?!お前、どうしっ?!雪月!!」
光秀の腕の中にはぼろぼろでぐったりとした雪月が。
「...家康、雪月の手当てを頼む。政宗、コイツの尋問やってくれ」
光秀の後ろにはぐるぐる巻きにされた男が一人。
無事とは言えない姿の雪月(と光秀)を目に入れたその瞬間だった。
「...ぶっ殺す」
横から地を這うような低い声が聞こえた。
(まさか...)
嫌な予感ってのはよく当たるもんだな。
マジでキレた表情の秀吉は既に抜刀し、今にも男に斬りかかりそうだった。いや、気持ちはわかるけどな...
「...秀吉、殺すなよ」
「何でだ」
「何でだじゃねぇよ、コイツ尋問しないと色々聞き出せないだろうが」
「あんなぼろぼろになるまで雪月を痛め付けたのにか」
「全部聞き出してから殺ればいいだろう」
「今殺らんと気が済まない」
「あのなぁ...」
こうなった秀吉は本当めんどくさい。
秀吉を宥めつつ男を牢へ引っ張っていく傍ら、ちらりと後ろを振り返れば、光秀が倒れた...え?
「は?!」
考えてみればあれだけ出血してるんだ、そりゃ倒れるなと思ったが、光秀があれほどの重傷を負うのも珍しいなぐらいにしかこの時は思ってなかった。