イケメン戦国~天下人の妹になる気はないか~ 番外編
第5章 秀吉の暴走
本編第11、12章『ゆーかい』、『てあて』の裏側のストーリー。
政宗目線で御送り致します。キャラ崩壊注意。
今朝、突然行方不明になっていた雪月が無事とは言えない姿で帰ってきた。
...傷だらけでぼろぼろな姿で。
だからなんだろうな。
「ア、アァ...」
「さっさと吐け!何処のどいつに頼まれたんだ!」
「ギャァッ!」
嗚呼、誰か彼奴を止めてくれ。
薄暗い牢屋でボロボロで血塗れな男と無表情で返り血を浴びている男を見ながら俺は他人事のように思った。
俺の目の前にいるのは、本当に豊臣秀吉なのか...?
何故、秀吉がここまでしているのか。
それは今朝、秀吉に緊急召集されたことから始まる。
『雪月が何処にも居ない』
これを聞かされたときは驚いた。
過去のことが原因で初めての場所や人間を怖がる雪月が一人で勝手に何処かへ行くとは思えない。
秀吉に聞かれ、最後に雪月と会った時を思い返してみた。
...そうだ、昨夜だったな。
「ましゃ~」
とてとて、と可愛らしい足音と共に聞こえてきた可愛らしい声。
振り向けば、湯上がりで火照った顔の雪月が駆け寄ってくる。
可愛いなと思いながらしゃがんで両腕を広げてやれば、雪月は嬉しそうに飛び込んできた。
「雪月、廊下走ったら秀吉に怒られるぞ」
「だって、ましゃがいた、から」
「可愛いこと言いやがって」
小さな身体を抱き上げる。初めて会った頃は痩せ細っていてとても軽かったのに、今では歳相応の重さになっている。
「雪月様、政宗様、」
雪月の後ろから声をかけてきたのは女中の松。安土城に仕える女中の中でも特に信長様を始めとする武将達に信頼されているから雪月の世話役を任されているのだ。
「あ、松」
「まつしゃん」
今でこそ雪月もなついているが、最初は完全に警戒していたらしい。本当、変わったな。
「雪月様、寝る時刻にございますよ」
「あい。ましゃ、おやしゅみ」
「あぁ。おやすみ、雪月」
松に抱っこされ、俺に手を振る姿が、その日俺が見た雪月の最後だった。