第8章 白
「!!要さん…!!!?」
「起こしたか?」
起きた時には、身体は綺麗になっていた。
要さんは心配そうに、着替えている途中で私を見下ろした。
「お、お出掛けですか…?」
「スタジオ行ってくるだけだ」
「いっ、一緒に…」
立ち上がろうとしたところで、力が入らなくてその場に座り込んでしまう。
「無理だ、ゆっくり寝てろ。
飯も作らなくていい。
適当に買ってきてやるから」
「…っ!」
一人になると、また考えてしまいそうで怖い。
離れないで、なんて、おこがましい言葉が出そうになる。
不安そうな顔だったのか、要さんはベッドに腰掛けて隣に座ってくれた。
「どうした?」
「……」
言葉を飲み込んだのがバレてしまった。
「言っていいんだぞ、俺はお前のパートナーだ」
「!!」
欲しかった言葉が、やっと届く。
「……、離れたくない、です…」
それでも申し訳なくて、小声で、初めて我が儘を言った。
要さんも意外だったみたいで、少し驚いている。
「帰ったら、な?」
含みのある言葉でそう言うと、優しくキスされた。
嬉しさとよくわからないむずがゆさと、しばらく呆然としてしまった。
玄関の鍵のかかる音を聞いて、ようやく我に帰る。
強引で、優しい人。