第8章 白
「多々良と飯だとぉ?」
「たまたま、会って…」
帰宅したら予想外なことに、要さんがいた。
軽いお昼を作りながら、さっきまでの話をした。
「いらっしゃらないと思ったので……」
「ま、一人になってないならヨシとするか」
「?」
「最近、お前を探してるっぽい奴がいる」
「……」
「学校には誤魔化してあんだろ?
でねえとまた面倒に…」
「要さん…、私…」
「一瞬でも帰るとか思うなよ」
先にしっかりと釘を刺された。
「迷惑だと思うなら、最初から追い出してるっつーの」
「……はい」
言い返せないまま、流されるように返事をしてしまった。
たまに、要さんの強引さが嫌になる。
私の為だとわかっていても、言い返せないようにする雰囲気や圧がツラい。
茹でたパスタと野菜とソースをお皿に盛り付けて、テーブルに用意した。
「要さん、気持ちは嬉しいのですが…」
「お前が帰ったとこでどーなる?
また強姦されて終わりだろ。
死ぬような暴力もないとは限らねえ。
親同士の責任であってお前は関係ねえ」
「でも、お母さんが……」
「見抜けなかった罰だろ」
「……」
言ってることは凄くわかる、なのに、腑に落ちない。
きゅっと唇を噛む。
何も言い返せない。
怖くて震えてしまう。
私はここでいい。
そう静かに言い聞かせる。
私が、ここにいる理由がますますわからない。