第5章 紅
「これでもう、劣等感なんてねえだろ?」
起きて最初にそう言われた。
それはもう余裕の笑顔で。
恥ずかしさと後悔と、嬉しさ。
頭が混乱しててまともに顔を見れなくてブランケットを被った。
「な!!なんでだコラァっ!!?」
「やだ!やだっ!」
「嫌、だったか?」
すっと冷静な声になる要さんに動揺した。
勿論、嫌じゃなかった。
「嫌じゃ、……ないっ……」
そこまで言って、自分がはしたなく感じて声をすぼめる。
「だろ?」
眩しいくらいの笑顔でそう言われ、頷くしかない。
この強引さと余裕が、私にも欲しいと思った。
何より、自信に満ちた表情は、言葉では言い表せないくらいに綺麗で、芸術品のように思えた。