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ミケ生誕記念作品集

第1章 お伽噺のように結ばれたい



「お前に見せたいものがある。一緒にこい」

そう言ったミケは手を差し出す。

「掴まれ」

「は、い……」

ユリアが鐙に足を掛けてミケの手を掴むと、力強く引き上げられた。座ったのは前側。

「ふ、前に乗るか」

「え、あ、すみません、後ろに足を掛けるのが怖くて……」

「いや、構わない。セクハラとか言うなよ」

「もちろん……」


そう言ってミケの前に座ったまま、ミケに連れられた場所。それは馬術場の近くの小高い場所。

兵舎が見渡せるほどに高い場所で、壁に隠れていく夕陽を見られる最高の場所だった。


そこでミケの新兵時代の話や、昨日のことは毎年よく見る光景で、恐怖することや後悔してしまうのは人間である以上、当たり前の感覚だということ。

何より、他の新兵が去っていく中に残ったユリアは、誰よりも勇敢であると、胸を張っていろ、そうミケはユリアの横に座って話した。


沈みゆく夕陽のせいだろう。ユリアはミケについこぼしてしまった。


兵団選択の時、自分は考え事をしていて去り遅れたこと。だが、ユリアはある気持ちが芽生えていた。

こんなに部下を思っている人がいるなんて思わなかった。この人になら、自分の命を預けられるかもしれない。まだ実戦を見た訳では無いが、リヴァイ兵長の次に精鋭であると聞いた。長く生き延びているのもそれが証拠。

そして分かった。ミケこそユリアの本当に求めていた王子様なのだと。


「調査兵団に入団した理由は正直有り得ないものだとは思います……ですが、私、覚悟が決まりました。調査兵団で人類の為に尽くします、王子……ミケ分隊長の為にも」

「……ああ、ありがとう。新兵にそこまで言われた事は無いから素直に嬉しい」


その言葉に笑顔になってしまうユリアにミケは、ユリアの頭に大きな手のひらを乗せて軽くポンポンとして立ち上がった。

「さあ、そろそろ戻るぞ。飯の時間だ」


ミケの行動にユリアは頭を沸騰させながら、次もミケの後ろに乗りそびれ……た訳ではなく、シレッと前に乗って馬術場まで戻って行った。




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